職場で問題となる「パワハラ」の定義。「セクハラ」との違いとは?

健康

「パワハラ」とは職務上の地位や優位性を背景にして精神的・身体的苦痛を与えること。

電通社員である高橋まつりさん(当時24歳)の自殺による「電通過労死問題」は過重労働を強いられたことによる自殺として2016年の暮れに労災認定されたことで、労働環境悪化の象徴的な事件として大きな話題となりました。

 

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また、昨今では「ブラック企業」という言葉が一般に使われるになり、職場における労働環境改善を目指す中で「パワハラ」という言葉がよく聞かれるようになりました。

しかし、「パワハラ」がどのような「ハラスメント」であるかは、実はまだよく知られていません。また「パワハラ」が「セクハラ」や、最近よく言われるようになった「マタハラ」とはどのように違うのでしょうか。

ここでは、この3つのハラスメントの定義と違いについて解説します。

「パワハラ」ってなに?「いじめ」「いやがらせ」とはどう違うのか。

「パワハラ」とは、文字どおり「パワー(カ、権限)」を利用して「ハラスメント (嫌がらせ)」を行なう行為のことです。

 

それ以前には、単に「職場のいじめ」「嫌がらせ」などで捉えられていた行為が、2000年前後から「パワーハラスメント」(略して「パワハラ」)という言葉で呼ばれるようになりました。「いじめ」「いやがらせ」「迷惑行為」「侮蔑」「差別」などをひっくるめて「パワハラ」といい、職場、取引関係などビジネスと企業、仕事の現場で使われる言葉です。

 

「パワハラ」という言葉が一般に広まったことで、職場における「いじめ」や「過重労働」などの被害を訴えやすくなった半面、「パワハラ」が具体的にどのような行為を指しているのか、わかりづらくなった面もあるといえます。

 

 

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「パワハラ」の定義とは?

 

パワハラの相談が増えて社会問題化されるにともない、国に対しパワハラ対策を求める声が高まってきました。そこで、厚生労働省は2012年3月、「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」(以下、「提言」という)を発表しました。「提言」では、「職場のパワーハラスメント」を次のように定義しています。

同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為をいう。

 

ひと言でいえば、「権限を利用して精神的・身体的苦痛を与える」ことです。「職場内の優位性を背景に」「業務の適正な範囲を超えて」「職場環境を悪化させる」という行為も対象になり、これもパワハラの定義の重要なポイントです。

たとえば、「職場内の優位性を背景に」というのは、パワハラは上司が部下に対して行なうものだけではないということを意味します。同僚間で起きるパワハラもあるのです。

 

「提言」では「パワハラの類型」も示されています。どういう行為をパワハラというのか、具体的に6つのパターンに整理したもので、これにより、会社(雇い主)と労働者の間で「パワハラとはどういうものを指すのか」についての認識が深まり、予防や解決に向けた取り組みが進むことが期待されています。

 

厚労省の「提言」があげるパワハラの6つのパターン

① 暴行・傷害(身体的な攻撃)
② 脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
③ 隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
④ 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
⑤ 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
⑥ 私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

 

しかし、現状のこの「提言」には、顧客や取引先、親会子会社間の力関係を背景としたパワハラ防止といった視点が抜けています

 

また学歴差別や正社員と派遣社員、契約社員など、雇用形態による差別防止の視点なども入っていません

 

パワハラを「同じ職場内で起こる問題」に限定してしまうと、パワハラが社会的問題であること、個人対個人の問題ではなく、働き方や、職場・社会のあり方に原因があるということが見えづらくなってしまいます。

 

この6つのパターンにあてはまるものだけが、パワハラではないということを覚えておきましょう。

 

セクハラとパワハラの違いは「嫌がらせ」の質。

 

では、以前からよく登場する「セクハラ」と「パワハラ」はどう違うでしょうか。

セクハラは、性的な嫌がらせ(性的に不快にさせる言動・暴力行為)を指します

 

たとえば容姿について相手が嫌がるような発言をしたり、極端な場合は、職場の上下関係を利用して性的な関係を強要する、性別を理由にした差別などがそれにあたるでしょう。

 

一方、パワハラは「性的」ではないいやがらせですが、職場での地位や優位性を背景に苦痛を与えるという点では、セクハラもパワハラと重なる面があります。

 

ただし、セクハラに関しては男女雇用機会均等法11条で、事業での性的言動によって労働者に不利益を与えたり就業環境を悪化しないような対策をとることが義務づけられています

 

残念なことにパワハラについてはまだ法律で決められてはいません。「提言」は法律のような強制カはありませんが、国がはじめて出したガイドラインともいえるもので、これをもとに、企業は労働者の環境を改善するためにパワハラ防止についても取り組んでいく必要があります。

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最近よく聞く「マタニティハラスメント」とは何?

 

マタニティハラスメント(略して「マタハラ」)とは、妊娠・出産を理由として解雇や契約打ち切りをされたり、妊娠・出産にあたって職場で受ける精神的・肉体的ないやがらせのことです。

加害者は、上司や同僚個人のこともありますが、職場ぐるみや会社ぐるみのいやがらせを受けることもあります。ここ2、3年で、マタニティハラスメントが急増しており、「セクハラ」「パワハラ」「マタハラ」はは、働く女性を悩ませる3大ハラスメントだと言われています。

「マタハラ」についてはまた別の機会に解説することにしたいと思います。

 

まとめ

経済成長が見込まず、業績が上向きになっても企業利益を労働者の賃金をあげる方向性にならないまま、団塊の世代が大量退職したあとの人手不足が加速しようとしています。

職場の労働環境が改善しない中で、これらの「パワハラ」「セクハラ」「マタハラ」が増加しているのです。

これらの「ハラスメント」についての知識を雇用する側もされる側も、正しく持つこと、そして対処方法を見直すことが必要です。

 

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