やる気はどこから出てくるのか
「やる気」は人を動かす原動力となるものです。これは行動の背景にある欲求とも言い換えられます。もっとも、「やる気を出せ」と言われるだけで行動する人はいないでしょう。では、どうすれば人を動かすことができるのでしょうか。
以前は、欲求には優先順位があるという考え方が一般的でした。
「衣食住足りて礼節を知る」などという言葉があるように「食欲」「睡眠欲」と言った最低限の生理的欲求が満足されないと、「自己実現」などといったレベルの高い欲求を人間は満たそうとはしない、という考え方です。
そのため、まずは「報酬」という最低限の欲求を満足させることが重視されたのです。
今では、こうした欲求の順位付けの考え方は否定されています。
苦痛を避けようとする動物的欲求は、この食欲や睡眠といった欲求が満たされないと不満を感じます。
一方、成長しようとする人間的欲求は、原始的な動物的欲求とは無関係に生まれ、それが満たされることで満足を感じるのです。ですから、不満が解消すればやる気が出るわけでもなく、やる気があれば不満がまったくないわけではないのです。
① 満足につながる要因
例えばお客様に感謝されたり、重要な仕事を任されたりすると、多くの人は仕事に対してやる気が出てくることが多いのです。ただし、そのような要因がないからといって、強い不満が生じるわけではありません。
② 不満につながる要因
例えば職場の空調が適正にきいていないと、暑かったり寒かったりすることで不満を感じます。しかし、空調が効いているからといって、仕事にやる気が湧いてくるわけではないのです。
やる気を引き出すためには②ではなく、①の満足につながる要因に配慮する 必要があるのです。
とはいっても、どのような要因が満足につながるかは、地域差や状況、そして何よりも個人差があります。たとえばアメリカでは、責任や昇進が強いやる気に結びつく動機となりますが、日本では逆に不満に結びつきやすいことが知られています。
また、同じ地域でも報酬が多いとやる気が出る人もいれば、報酬が少なくともやりがいや達成感が欲しい人もいるのです。
やる気を引き出すには相手によってさまざまです。相手の欲求を見極めて対応することが大事なのです。
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人を動かすのは子育てと考え方は同じ。
人を動かすというのは、他人を自分の思い通りにするということではありません。
「命令だから有無を言わず従え」などと怒鳴りつけても逆効果なだけです。
人を動かしたい時の基本的な考えは「子育て」と同じです。
子供を育てる時は、自分の所有物として扱うようなことはしないで、人間として誠実に向き合って育てることが大事です。
もちろん相手の判断力が十分でないうちは、手取り足取り指示することも必要になってきます。しかし、相手が成長するにつれ、徐々に自分で行動させ、相手の考えや気持ちを十分に汲み取って、その決断を尊重することができれば、あとは見守るだけになるはずです。
ビジネスの現場においては「そんな悠長な事は言っていられない」とか「相手は自分の子供じゃない」などと考える方が多いかもしれません。
しかし、それは大きな間違いだと最近では考えられています。こういった考え方はすでに「動機づけオペレーション理論」としてマネジメントのジャンルで古くから研究されてきたものなのです。
ハーズバーグの動機づけ・衛生理論《Herzberg’s Motivation-Hygiene Theory》
アメリカのF.ハーズバーグによって提唱されたモチベーション理論。ハーズバーグは、仕事に対する満足をもたらす要因と不満をもたらす要因が異なることを示し、前者を「動機づけ要因」、後者を「衛生要因」と呼んだ。
動機づけの要因には、仕事の達成感、責任範囲の拡大、能力向上や自己成長、チャレンジングな仕事などが挙げられる。 衛生要因には、会社の方針、管理方法、労働環境、作業条件(金銭・時間・身分)などが挙げられる。
動機づけ要因を与えることにより、満足を高め、モチベーションを向上させることができる。一方、衛生要因に対して手を打つことにより、不満は解消されるが、そのことが満足感やモチベーションを高めるとは限らない。出典:グロービス経営大学院「MBA用語集 」より
動機づけには「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」の2種類があることが指摘されています。
「内発的動機づけ」とは、例えば、遊びに夢中になっている子供は、誰かにそうしろと言われて遊んでいるのではなく、単にそれが楽しいからやっているのです。「外発的動機づけ」とは、これに対して他から目的が指示されたり、強制されたりして行う場合の動機づけの事です。
同じ勉強するにしても親に勉強しろと叱られ、強制されて渋々やる勉強はなかなか進まず、親が見ていないところで、自分のやりたいことに流れるといった行動になりがちです。
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まとめ
人を動かすためには、すべきことがしたいことになるように動機づけし、環境づくりをする必要があります。やるべきことを押し付けるのではなく、まずは相手を受け入れ、話を聞くことから始めてみましょう。
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